皆さまこんにちは、ナカシマです。
2024年最初の記事はコタ クムニン(Kota Kemuning)産ハーベイF1の成長記録の最終回です。
今回もずらずらと写真を並べてみました。
14週目以降は劇的な変化はありませんが、徐々に大きく立派に育っていく様子が見て取れると思います。
最後のまとめで今回ハーベイを育てるうえで新たに工夫した点やコタクムニン産ハーベイの色の出方について私感を述べていこうと思います。
14週目
すでに良い発色ですが、個体によってまだ色の出方がまばらです。
尾鰭に若干赤褐色が見えます。
16週目
殆どのオスは発色してきました。
オス同士よくフィンスプしています。
体長は約2.0cm、全長は約2.5cmほど。
18週目
19週目
20週目
この辺りまで来るとどのオスも常に発色しており兄弟同士でバチバチにフィンスプします。
鰭が裂けてしまうこともありますがすぐに再生します。
尾鰭の赤褐色の模様はほぼ目立たなくなりますが、光の加減で見えることもあります。
22週目
サイズは少し小さいですが、見た目はほぼ成魚と変わらない所まで来ました。
オスは体長2.2cm全長3.0cmほどでメスは体長2.0cm全長2.5cmほど。
メスが常に一回り小さいです。
26週目
生後半年です。
個人的に半年でほぼ成魚サイズまで育てるのが一つの目標であり、育成が上手くいったかどうかの目安になっています。
まだ少し小さい個体もいますが、個人の飼育環境なら1年以内に成魚になれば御の字だと思います。
29週目
31週目
ここまで来るともう成魚といっても良いでしょう。
親個体と比べるとまだ少し小さいですが、ここまで立派になれば十分です。
半年のまとめ
繁殖結果
この子達は2023年2月に大阪のベタショップフォーチュンさんから購入したコタ クムニン(Kota Kemuning)産のハーベイから生まれた子達です。
6月4日に産卵、7日に孵化を確認しています。
孵化から1ヶ月目の時点で43匹を確認、6ヶ月時点でオス17匹メス9匹が残りました。(うちオス6匹メス3匹は新しい飼い主の所に旅立ちました。)
最終的に成魚サイズまで育ったのは26/43で約6割、性比はだいたい♂2:♀1になりました。
6ヶ月時点でオスが全長約3.0cm、メスが約2.5cmでメスが一回り小さいです。
前回のジュエリナエ(P.juelinae)F2は最終的に4~5ペアしか残せなかったので今回の繁殖成績はまずまずといったところでしょうか。
飼育環境について
インスタグラムではサラッと書いてしまいましたが、こちらではもう少し詳しく書こうと思います。
飼育密度
浮上後は繁殖水槽(25×25×16cm)でそのまま育てて生後1ヶ月の時点で43匹を特大プラケース(43×35cm)2つに別けています。
その後は1ヶ月おきに計数と選別をしてどんどん容器を別けています。
飼育容器は特大プラケース、L水槽、30cmキューブとおおよそ25L前後の容器を使用しています。
生後1ヶ月〜3ヶ月の段階では一つの容器に10〜12匹、最終的に6〜8匹の密度になるようにしています。
これはあくまで経験則によるものですが、これくらい低密度にしないと思うように成長してくれないと感じます。
餌やり・水換え
浮上直後はゾウリムシ(Paramecium sp.)を朝夕与え、その後1週間かけて徐々にブラインシュリンプに切り替えています。
浮上直後の稚魚は小さすぎて何処にいるか判らないうえ、自分のすぐそばに餌が来ないと反応しないため水槽全体にまんべんなく餌を流しています。
最初のうちは摂食チャンスを増やすため朝夕2回ブラインシュリンプを与えていますが、ある程度大きくなったら1日一回で済ませています。
3ヶ月経ったあたりでグリンダルワームも与えています。
グリンダルワームは脂肪が多いのか与えすぎると太るので、主食はブラインシュリンプでグリンダルワームはブラインシュリンプが用意できない時やオヤツ程度に与えています。
浮上後〜生後1ヶ月頃までは飽和給餌で水が悪くなりやすいのでほぼ毎日10%ほど水換えします。
1ヶ月過ぎると大きい容器に引っ越しするのでここからは1週間に1〜2回20%ほど水換えしてます。
一度に何%水換えするかとかは深く考えていません。単純に一度に水換え出来る水量がこれだけというだけです。
水換えに使用する水は基本的に水道水にAZOOのトリプルブラックウォーターを入れてカルキ抜き・pH調整したものです。
稚魚が小さいうちはテトラバイタルなどのビタミン剤も使用していますが、効果があるかはまだ不明です。
水槽環境
稚魚水槽にはスポンジフィルターを設置して水を回し、陶器のシェルターや落ち葉(クヌギの葉)を使って隠れ家を作ってナヤスやサンショウモ(サルビニア)等の水草を茂らせています。
底床は今までソイル(アドバンスソイルpHコントロール)を使用していましたが、今回は砂利に変更しています。
ソイルのほうが簡単に水質を調整できるのですが、白点病などの病気になったときにそのまま薬浴出来なかったりランニングコストも気になるので砂利のほうが良いんじゃないか?と思っていました。
それで今回色々試してみた結果、砂利でも特に問題なさそうということが判ったのでどんどん砂利に変更しています。
何種類か試した中で良さそうと思った砂利はDENNERLEのクリスタルクォーツとシンセーの津軽プレミアムです。
個人的にpHは6.0前後が一番管理しやすいので、pHを下げるために底に園芸用の無調整粉末ピートを敷いてから砂利を被せたり、大量にマジックリーフを投入したりしています。
また、底床に有機物を仕込んで放置すると嫌気化して有害物質が発生するという話もあるのでナヤスやクリプトコリネのような根を張る水草を植えて底床内の物質循環を促しています。(この考え方はボトルアクアや水草栽培勢の方々の理論を参考にしています。)
これで津軽プレミアムだとpH6.2〜6.8、クリスタルクォーツだとpH5.8〜6.0まで下がります。
ただ、このやり方はいわゆる『私のやり方』なので、真似される場合は完全に自己責任でお願いします。
詳しく知りたい方はコメントやインスタグラムで聞いてください。
また、pHが低いほうが稚魚の成長スピードが速いという論文が出ているので砂利よりソイルのほうが成長が早いと思っていましたが、自分の環境では大差ないように思います 。
病気に関して何故か一度も発生しなかったので特に言うことが無いのですが、砂利なら万が一白点病やコショウ病(Velvet disease)が出てもそのまま薬を使えるという点で精神的に非常に楽でした。
現在も病気は根絶状態なのでストレスフリーで育成出来ています。
ちなみにベアタンクで良いジャンという突っ込みは無しです。ベアタンク嫌いだし水草植えたいので(笑)
コタクムニン産ハーベイの色について
海外の方から、同産地のハーベイを飼育・繁殖しておりもしかしたら尾鰭の赤いオスが出てくるかもという指摘がありました。
これは私も思うところがあって、フォーチュンさんに問い合わせて色々ご迷惑おかけしてしまったのですが、今のところ真っ赤な色素を持ったオスは出てきていません。
ただ、薄い茶褐色の色素を持っているオスは何匹かいて、親魚も赤褐色の色素を薄っすら尾鰭に持っています。
これは成長途中の幼魚や色の飛んだ未発色の状態では確認出来ますが、発色した状態ではほぼ見えなくなります。
今までの私の認識では
・ブルーラインが各ヒレの真ん中あたりを通る。
・尾鰭外側のブラックバンドが他種より広い。
・腹鰭のフィラメントが黒色で長く伸びる。
・赤い色素を持たない。
これがハーベイの特徴だと思っていましたが、実際に自分で育てて見るとヒレのブルーラインの出方にはかなり個体差がありますし、本当に赤い色素を持たないのかも判りません。
尾鰭のブラックバンドが広い点と腹鰭のフィラメントが黒色な点は全てのオスで共通していたのでこの2つが信用出来る他種との識別ポイントかと思います。
オリジナルのハーベイは赤い色素を持たないようなのですが、現地マレーシアには尾鰭の赤い未記載種が確認されており、ハーベイの生息地近くにもいるようなので交雑が懸念されていたりします。(私はこの可能性を心配していました。)
現状この発色がコタクムニン産ハーベイの特徴なのか、交雑の結果なのか、飼育環境によるものなのかは判りません。
そもそもハーベイの原記載がいい加減で再度標本を集められたりしているのでオリジナルのハーベイってどれよ?みたいな感じだったりします。
この辺は今後の繁殖個体の表現を見たり、研究者達の発表を待つしか無いですね。
おわりに
ハーベイの繁殖記録いかがだったでしょうか?
個人的には今回ハーベイの育成には過去の反省がかなり活かされていて、ここに書かれている以外にも色々病気対策していたり、生存数から逆算して水槽も予め空けて準備していた結果ほとんどトラブル無くブリーディングすることが出来ました。
唯一の懸念点が、性比がオスに非常に偏っていてメスがとれない可能性があることでした。
結果的にオスメス比が2:1に収まりましたが、これはオスを厳しめに選別した結果なので実際にはもう少しオスが多かったです。
現状うちでブリードしているリコリスはオスが多くなる傾向にありますが、リコリスグラミーの雌雄を別ける要因についても研究していきたいですね。
また、今回は予想以上にブリーディングが好調だったので飼育スペースの確保も兼ねて成長の早い個体を何セットかヤフオクに出品しました。
決して安いとは言えない価格だったのですが、有り難いことにフォロワーさんにご落札頂きました。
本当にありがとうございました。狭い場所でやっているので繁殖個体が売れれば他のリコリスを殖やしたり飼育設備に投資出来たりして今後の活動がしやすくなるので本当に助かります。
以上でハーベイの繁殖記録は終了にしたいと思います。
また長文になってしまいましたが、ここまだ読んでくれてありがとうございました。
次はフィラメントーサスの記事を書こうと思いますが、私執筆が遅いのでいつ完成するか分かりません(笑)
まだフェニクルスとデイスネリィの記事も控えているので頑張って記事にしたいと思います……