リコリスグラミー 飼育・繁殖メモ

リコリスグラミーの飼育・繁殖その他もろもろの備忘録です。

パロスフロメヌス・フィラメントーサスの繁殖・成長記録 産卵から生後半年まで


こんにちは、ナカシマです。

だいぶ前の話ですが2023年7月4日に闘魚庵採集便のフィラメントーサス(Parosphromenus filamentosus."From Tengah")が産卵しました。

親魚の様子や稚魚の成長記録はインスタグラムにたびたび投稿していましたが、実際にワイルド個体を導入してから繁殖・稚魚を育てるまでの一連の流れをブログにも記録として残しておこうと思います。

少々長い内容ですが是非ご覧ください。

親魚導入


親魚は2023年6月16日に闘魚庵さんからParosphromenus filamentosus. "From Tengah"として購入した個体です。

こちらは闘魚庵のけんごさんが現地で採集されたものです。

手厚く扱われていたのかとても良い状態で届きました。

インスタグラムでは自生地保護のため大雑把なロカリティで流通されていると書いてしまいましたが、御本人のブログをよく読み返したところ採集地は中央カリマンタン・パランカラヤ近郊と明記されていました。

フィラメントーサスの原記載地は南カリマンタン・バンジャルマシン周辺ですが、リコリスグラミーの研究者であるWentian shi博士のFacebookによると、このブルーラインがハッキリ入るタイプのフィラメントーサスは中央カリマンタンに広く分布しているもので色彩・鰭条数等がオリジナルとは異なるそうです。

ですのでこのリコリスグラミーは厳密にはParosphromenus cf. filamentosus.になるかとおもいますが、ここでは採集者の表記を尊重してP.filamentosus. "From Tengah"として扱います。


導入後、初めはベアタンクで薬浴してながら様子を見ます。主に白点病・ウーディニウム病対策です。

どれだけ信用出来るショップさんから購入した場合でも、導入直後は薬浴して様子を見ます。

3日ほど様子を見て特に問題無さそうだったのでペアでL水槽に移動させました。

水槽には大量の落ち葉と陶器のシェルターを入れ、メスがオスから隠れられるようにセッティングしました。

底床はソイル(アドバンスソイルPHコントロール)、水面にサンショウモをたくさん浮かべてスポンジフィルターで水を回しています。水温は26℃前後、pHは計っていませんが恐らく5.8前後です。

産卵〜孵化


最初は警戒心がとても強く全く姿を見せませんでしたが、1週間ほどすると餌の時は人間が観察していても逃げなくなりました。


2週間ほどするとオスが積極的にメスにアピールするようになり、7月4日に産卵しました。


産卵後はメスをそっと取り出しました。

産卵から3日後の7月7日に孵化を確認しました。

普段は卵が孵ってから2~3日後にオスも取り出しますが、今回はオスを捕まえるのが困難だったため稚魚の方を優しく取り出しプラケース(36×21×25cm)に移動させました

浮上〜生後3週目


産卵日から1週間ほどで稚魚が泳ぎ始めるので最初はゾウリムシを与えます。

大体3日かけて徐々にブラインシュリンプに切り替えていきます。

使っているブラインシュリンプベトナム産です。

最初は順調でしたが、プラケースに突然イトトンボのヤゴが出現したため急遽稚魚を回収しL水槽に移しています。

一緒に入れていた水草に卵が付いていたようです。

回収時に稚魚の数を数えたところ35匹いました。

5週目


7週目


10週目


他のリコリスグラミーより成長が早く感じます。

12週目


この辺りでオスは薄っすら模様が出始めます。

13週目


オス個体
生後3ヶ月程度からグリンダルワームも与えています。

メス個体

14週目


オス個体

メス個体

15週目


ヒレが伸び始めています。

メスの鰭は透明のままです。

17週目


模様がハッキリ出て来ました。

20週目

22週目


この辺りで親魚と同じような発色に。オスとメスは別けて飼育しています。

24週目

26週目


ここで生後半年ですが、まだ親魚と比べたら全然小さいです。

体長2.5〜3.0cm、全長は4.0cmほどです。

メスはオスより一回り小さいです。

まとめ

繁殖結果とフィラメントーサス特有の難しさ

半年時点ではオス16匹メス7匹の合わせて23匹残りました。

生存率は23/35で約65%となりましたが、このあと何匹か死んでしまったので現在は少し数が減っています。

大きさはオスが体長3.0cm全長4.0cmほどでメスが体長2.5cm全長3.5cmほどですが、オスメス共にサイズのバラツキが大きいです。

親魚は全長4.5cm近い大きさだったのでまだまだ大きくなると思います。

飼育管理の仕方はハーベイF1のときとほぼ一緒なのでこちらをご覧ください。

ここではフィラメントーサス特有の難しさについて書こうと思います。

インスタにも書きましたが、フィラメントーサスの育成にはとにかくスペースが必要だと思います。

成長スピードが他のリコリスグラミーより早く若いオス同士激しくケンカするので、できるだけ綺麗な体型とヒレの長さを維持するため他のリコリスグラミーを育てる時よりさらに低い飼育密度(25L容器に対して4匹前後)で育てました。

それでも体型が歪んでしまう個体が出たり、大きさにバラツキが出てしまったので今のやり方ではフィラメントーサスを沢山育てるのは難しいと感じました。

60cm水槽等のもっと大きな容器でまとめて育てたほうが簡単に育成出来るかもしれません。

リコリスグラミーの性比

今回もオスが多めになっており、大体♂2:♀1の割合でした。

基本的にオス多めのほうが嬉しいですが、あまりオスに偏ると元々相対的に立場の弱いメスの立場がさらに弱くなってしまってメスが育たなくなる気がします。

ハーベイF1を育てたときにもオスが非常に多く、オスに対しメスは成長が遅かったです。

今育てているフェニクルスF1はメスの方が多いのでメスもオスと同じペースで育っています。

リコリスグラミーの性比については一切情報が無いのですが、経験上稚魚期の水質が関係しているのではないかと思います。

ここは今後の私の研究課題です。

リコリスグラミーを産卵させるには

私は何度もリコリスグラミーを繁殖させてますが、実際にどのような条件で繁殖するのかは自分でもまだよく分かっていません。

しかし、経験的に繁殖させるために重要だと思う要素はいくつかあります。

その中でも一番重要なのは『いかにコンディションの良い魚を入手できるか・あるいは育てられるか』だと思います。

もちろん水温やpHなどの水質条件を整えることも大事だと思いますが、結局は魚のコンディションが一番大事だと思います。

このペアは最初から非常に良いコンディションだったので、導入2週間という速さで産卵を迎えることができたのだと思います。

最近は種類の正確なリコリスグラミーを状態良く販売してくれるショップさんが出て来ましたが、私がリコリスグラミーを初めたころはロクに入荷もなく、たまに入荷してきてもヒョロヒョロで雌雄も判らないような謎リコリスグラミーが販売されているような状況ばかりでした。

現在のリコリスグラミーを取り巻く環境は嬉しい限りですが、自生地の状況を見るといつ入荷が途絶えるかは分からないので今のうちに国内でしっかり殖やして流通できるような環境を整えていきたいですね。