こちらはインスタグラムの投稿を元に内容を追加・整理したものです。
この記事では前半でジュエリナエの半年分の成長記録を、後半でジュエリナエの稚魚育成の結果を踏まえてリコリスグラミーの稚魚育成法について書きたいと思います。
とても長い内容ですが、これからリコリスグラミーの繁殖をしたいという方へ沢山ヒントを残そうと思った結果です。
是非ご一読ください。
パロスフロメヌス・ジュエリナエの成長記録
2022年4月末にパロスフロメヌス・ジュエリナエが2回産卵しました。
上のインスタ投稿が半年分の稚魚の撮影記録です。
親魚は闘魚庵さん(当時はよこはま金魚さん)から購入した個体です。
2022年1月に入荷した個体で2ペア導入してます。
1回目の産卵が4月18日、2回目が4月29日でオス親は同じ個体、メス親はそれぞれ別個体です。
ですので腹違いの兄弟姉妹がいます。
産まれた時は体長2〜3mmでしたが3ヶ月過ぎた頃から色が出てきて、6ヶ月で体長2.5cmほどに成長しました。
これは一番成長が速い個体の記録ですが、その他の個体も2cm程度まで成長してます。
6ヶ月過ぎたあたりで繁殖行動が見られ、F1個体同士での繁殖を確認しました。
リコリスグラミーの稚魚を育てる
過去の稚魚育成の結果と問題点
ここから、私の過去の飼育経験を踏まえて今回の飼育環境や意識していた事など長々と書きます。
私は過去にspセンタン・フェニクルス・リンケイなどの稚魚も育てています。
初めは数匹しか育て上げることが出来ませんでしたが、経験を重ねるごとに稚魚の歩留まりが良くなり、現在では産まれた稚魚を9割以上残すことが出来るようになりました。
しかし歩留まりが良くなった結果、過密飼育となり成魚まであと一歩というところで成長が止まってしまうケースが相次ぎました。
小さい魚だからそれほどスペースは必要ないだろうと思っていましたが、どうやら間違いだったようです。
フェニクルス・リンケイは1年過ぎてやっと生後半年のジュエリナエと同じか少し小さいくらいのサイズにしか成長していません。(一応まだ成長はしています。)
また、半年過ぎたあたりから明らかに成長スピードが落ちることから、最初の半年が勝負だと考えました。
そして成長スピードに関係してそうなものとして
・飼育密度
・餌の頻度と種類
・換水頻度
・微量元素(特にヨウ素)
このあたりを意識しながら今回のジュエリナエの育成に臨みました。
ジュエリナエを産卵させる
親魚は3ヶ月ほど飼養し、雌雄の成熟を確認して25×25×18cmの繁殖水槽に移しました。
繁殖水槽にはソイルとスポンジフィルターをセットし、マジックリーフ・サンショウモ・陶器のシェルターを投入しました。
水換えには、ソイルを使ってpHを下げた水にアズーのトリプルブラックウォーターを添加した物を使用しました。
基本的に週一回20%ほど換水してましたが、低気圧が接近したタイミングで換水頻度と換水量を多くしました。
これで水温25℃、pH5.5〜6.0、TDS50ppm前後をキープしました。
繁殖水槽に移して3週間ほどで産卵を確認しました。
今回はこれで産卵しましたが、実は繁殖のスイッチは私にはまだ解りません。
今までの観察結果から、しばらく安定した環境に置かれた後水質が変化すると繁殖行動をとるように感じています。
なので、とにかく親魚を状態良くキープし、頃合いを見計らって専用水槽に移し少し水質をいじたり産卵スイッチが入りそうな環境を作って様子を見るということを繰り返しています。
産卵後の初期管理
今回は稚魚を二腹分取りました。
これは単純に絶対絶やしたくなかったのとメスが2匹ともお腹パンパンで過抱卵になるかも?と思ったからです。
産卵後はメス親を回収し1週間はオス親に稚魚の世話を任せます。
卵は産卵日を1日目として3〜4日目に孵化、7日目から浮上し泳ぎ始めます。
稚魚が泳ぎ始める直前にオス親も回収します。
稚魚には7日目からゾウリムシを与え、10日目から徐々にブラインシュリンプに切り替え&水換え開始という形で管理をしました。
リコリスグラミーは基本的にどの種類でも産卵後同じような経過を辿るので、上記を真似してもらえば初期管理にはまず失敗しないと思います。
稚魚の飼育密度
産卵から約1ヶ月後に8Lの繁殖水槽から30Lほどの水槽に移動し、2ヶ月目あたりから成長の早い子を選別していき2グループずつに分け水槽計4つで管理しました。(30Lに15〜20匹ほど。)
今までは30Lに一腹分30〜40匹ほどの密度で稚魚を育てていましたが、今回はその半分の密度で育てています。
また水槽の移動時に計数も行いましたが、先に産まれたグループが1ヶ月目40匹→2ヶ月目40匹、後のグループが1ヶ月目39匹→2ヶ月目39匹と2ヶ月経過時点で死亡ゼロという脅威の生存率でした。
このあとも定期的に選別していき最終的に30リットルに6〜10匹程度の密度で飼育しました。
半年後の結果を見るに、やはり今までは過密飼育だったのだなと感じています。
今回のケースからすると単純計算で1匹あたり3〜5Lのスペースが必要ということになります。
もちろん単純な水量ではなく横の広さが重要なのだと思います。
稚魚の餌
餌は基本的にブラインシュリンプです。
可能な限り朝夕の2回与えていましたが、大変すぎたのでたまにサボってます。
身体の縞模様がはっきり出てくる2ヶ月目以降から、少しずつグリンダルワームも与えました。
グリンダルワームを良く食べる子は成長が速いです。
しかし、グリンダルワームはブラインよりサイズが大きく、食べるのが上手な子と下手な子で差が出てしまったのでもう少し後で与えれば良かったかなと思っています。
また、グリンダルワームは脂肪が多いようなので与えすぎると内臓を傷めたり水を汚すので注意が必要です。
水槽を4つに分けてからはブラインとグリンダルワームの配分を水槽ごとにそれぞれ変えて与えてみました。
その結果僅差ですが、ほぼブライン=ほぼグリンダルワーム≦ブライン&グリンダル混合といった感じで成長スピードが速くなりました。
一回限りの結果なのであまり信憑性はありませんが、複数種の餌を与えるほうが成長には良さそうです。
微量元素の効果は解らず
今回は水換えの度にセラのアクタン(途中無くなってからはテトラのバイタル)を使ってミネラルとヨウ素の添加を行いました。
ヨウ素は成長ホルモンの材料ということで添加の有無で成長スピードの差を見る研究なんかもあります。
結果ですが……すみません、わかりません。
なぜなら比較実験を行わなかったからです。
万が一これで成長に差が出てしまった場合、添加しなかった子達が可愛そうだなと思ってやる気になれませんでした。
ひとつ言えるのは、規定量を添加しても特に悪い影響は見られなかったということだけです。
水換えは正義
換水頻度についてですが、ガンガン換水したほうが良いということが経験的にわかっているので3〜4日ごとに15%ほど、最低でも1週間に1回は換水しています。
換水をサボったり餌をあげすぎたりするとベリースライダーの子が出るのですぐわかります。
今回ベリースライダーの子は出なかったのでこれぐらいの換水頻度で間違ってはいないようです。
ちなみにベリースライダーになっても初期なら毎日換水すれば治ります。
諦めずにお世話してあげてください。
シェルターの有効性について
ここからは文字数制限でインスタに投稿出来なかった内容です。
今回生後1ヶ月過ぎたあたりから仲間同士で壮絶な小競り合いが始まりました。
恐らく稚魚を観察しやすいように隠れ家を少なめにしたのが原因だと思います。
怪我をするほどではありませんでしたが、見るに耐えないのでシェルターとマジックリーフを追加しパーソナルスペースを確保できるようにしました。
その結果、目に見えて喧嘩の頻度は減りました。
観察やメンテナンスのしやすさとトレードオフになりますが、出来るだけ隠れ家を用意してあげたほうがストレスや喧嘩のリスクが軽減されると思います。
結果、リコリスグラミーは半年で成魚に育った
以上がジュエリナエ育成の上で意識していたこと・試してみたことです。
結果的に半年でほぼ成魚まで育て上げることが出来ました。
7ヶ月目にはF1個体同士での繁殖も確認しました。
今までの経験からリコリスグラミーは1年かけて成魚になると思っていましたが、今回の件で完全に覆されました。
特に影響が大きかったのはやはり飼育密度だと思います。
出来るだけゆとりある環境で育てることが成魚まで育て上げる上で大事なポイントだということがわかりました。
餌は少量を1日に数回、出来れば複数種を与えるのが最適解だと思いますが、現実的には難しいと思います。
私も途中からサボりましたし、1日一回ブラインを与えるだけでも特に問題ないように感じます。
どちらかというと大事なのは一度に与えすぎないことだと思います。
微量元素については今回解りませんでしたが、ヨウ素についてはトゥイーディの稚魚を使った研究が既に行われています。
オープンアクセスですのでURLを載せておきます。
Effects of pH, feeding regime and thyroxine on growth and survival of Parosphromenus tweediei (Kottelat and Ng, 2005) fry
M.S. Zulkifle *, A. Christianus, Z. Zulperi
http://sifisheriessciences.com/browse.php?a_id=259&sid=1&slc_lang=en
是非翻訳して読んでみることをオススメします。
リコリスグラミーについての日本語の情報というのは現状ネット上にも少なく繁殖に関しては皆無だと思います。
今回のレポートはあくまで一個人の適当な実験結果なので他所でも同じ結果になるかは分かりませんが、繁殖から成魚になるまで観察し続けた一つの例として皆さんの参考になれば幸いです。